証言記録

小名浜地区災害ボランティアセンターの立ち上げ

小名浜地区災害ボランティアセンターが立ち上がったのは4月19日です。このボラセンを立ち上げようと思うまでは、御用聞きスタイルで救援物資を配ることと、自炊の炊き出しを仕掛けることまでで私たちはNPOのザ・ピープルとしての活動は十分だと思っていました。でもあるとき、うちの若いスタッフが、毎日毎日津波の被災者の方が避難所から自分の自宅に通っていっては泥除きや片づけしているのを見ていて、手伝いたいと言い出し、それをピープルで手伝いますというポスターを避難所に掲げたのです。けれども、手伝ってほしいという要望は来ませんでした。何で来ないのかなと考えたときに、支援物資を持ってきてくれたり、食材の提供をしてくれたり、避難所に来てくれる分にはウエルカムかもしれないけど、自分のプライベートな場所に来て、片づけを一緒にやって下さいと頼む相手としてまでピープルが被災されている人たちと信頼関係を結べているかというと、そんなことはない。そして、きっとお上にだったら遠慮なくお願いできるけど、一NPOにお願いしますとなかなか言いにくいということもあるだろうということで、それだったらお願いしやすい立場になることがいいんじゃないかということで立ち上げを決意しました。

 この小名浜では、NPO法人ザ・ピープル、UGMという学生のボランティアのサークル、それからMUSUBUという地域活性化の若者たちのグループと3者共同でボラセンを立ち上げました。しかし、自分たち自身では何のノウハウも持っていなかったので、災害ボランティアセンターがどういうものなのかというノウハウを提供してもらい、被災者と信頼関係を結ぶためには、(社)いわき市社会福祉協議会の傘下に入りサポートをしてもらうのが進めやすいんじゃないかというふうに考えました。

 実際には(社)いわき市社会福祉協議会のほか、社会福祉協議会の九州ブロックの方たちが週がわりでボラセンに張りついて、ノウハウを提供してくれました。また、同じいわき市で被災者支援を行う国際NGOシャプラニールもボランティアを出してくださいました。手探りではあったけれども、みんなでつくり上げていって、その中で若者たちがどんどんスキルアップしていき、地域の中の次世代を担う人材育成のような意味合いも多い事業になっていったなと思います。私は地域の中に次につながるものを残せたという意味では、この形はよかったのだと思います。

平にある(社)いわき市社会福祉協議会の中のいわき市災害救援ボランティアセンターとの連携の仕方は、最初のころはサテライトのような形にして、ニーズの吸い上げだけを行い、ボランティアは平から回ってくる形にしようと思っていたんですね。ところが、平で受け付けをして、それからここの津波被災地の現場まで来ると、どこも小1時間かかり時間的なロスが大きいのです。ここ小名浜からなら5分、10分で行けるところがたくさんあったので、それだったらここでボランティアも受け付けをして、行ってもらうほうがずっと効率がいいだろうということで、小名浜でも受け付けることになりました。ニーズの吸い上げとボランティアの派遣、双方の作業をすることにしました。

 いわき全体のことは自分たちでは手は回らないと思っていました。久之浜で何が起きているのか、四倉がどうなっているのかということに対して、私たちが介入することは難しいけれども、せめて小名浜という地区に関してだけは、自分たちが事務所を構えていて、活動の拠点があって、3月の20日には実は潮目交流館でイベントをするはずになっていて、という思いがあるところでは、せめて自分たちの地域は自分たち自身で何とかしたい。小名浜に関しては知らん振りはしたくないと思って動きましたね。

インタビュー日 2012年10月25日
インタビュー証言者 吉田恵美子氏(特定非営利活動法人ザ・ピープル代表/いわき市小名浜地区災害ボランティアセンター代表)
地域 小名浜

詳細情報

対象時期 ~3週間
災害の種類 地震,  津波,  原発事故,  風評被害
関連URL http://onahama-volunteer.jimdo.com/

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